待機児童対策

2001年に、小泉政権が待機児童ゼロ作戦を掲げて以来、歴代政権は待機児童のゼロを目指しています。安倍政権も、2013年の待機児童解消加速化プランで、2017年度までに受け皿を50万人分増やし、ゼロにするとしてきました。保育園の定員は、2001年度の194万人分から2017年度には274万人分まで増加しています。計画以上に進んでいますが、子育て世代の共働きが増えたことにより、施設整備が追いついていません。昨春の待機児童は、全国で2万6千人を超え、3年連続で増え続けています。そのため政府は、昨年6月に待機児童ゼロの目標を2020年度までと、3年先送りしています。
待機児童対策にとって現在必要なことは、保育士不足解消です。保育士の登録者は、2011年度からの5年間で33万人増えました。しかし、働いていない潜在保育士も18万人増え、2016年度は計86万人に上ると推計されています。現場から離れる最大の理由は、待遇への不満です。東京都の調査によれば、現職保育士の2割が退職意向を持ち、6割が給与の改善、4割が増員を求めています。2016年の保育士の平均賃金は月22万3千円で、全産業平均より11万円も安くなっています。現在、段階的に保育士の賃金を上げてきています。
もう一つの原因としては、保育士の配置基準が考えられます。現在、配置基準は、保育士1人あたり1~2歳児なら6人、4~5歳児なら30人などと定められています。しかし、通常の認可園では、平均の基準の2倍以上の保育士を配置しています。
欧州各国を中心に、保育士の賃金を小学校教諭と同等にすることや、保育士の配置を年長児でも1人あたり15人までとするとしています。2013年の幼児教育と保育への公的支出の対GDP(国内総生産)比は、北欧やフランスなどで1%を超えています。一方、日本は0.4%で、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均0.7%を大きく下回っています。
安倍政権は幼児教育無償化政策を打ち出しています。幼児教育における保育士の役割は重大なものがあります。幼い子ども向けに公費を支出する投資効果は絶大です。保育士が逃げ出すような現場を放置しておいては、子どもたちに良いはずはありません。

(2018年2月26日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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