待機児童対策

厚生労働省の発表によれば、待機児童数は2020年は1万2,439人となり、前年から約4千人減少しています。減少したのは3年連続で、政府が調査を始めた1994年以降では最も少ない数字となっています。都市部などで、受け皿となる施設の整備が進んだためです。安倍前首相は、女性の活躍を成長戦略の柱に掲げ、待機児童ゼロの目標を立て、2020年度末までに先延ばしにしましたが、目標達成は難しいようです。
厚生労働省が発表している待機児童数とは別に、特定の施設だけを希望しているなどの理由で集計から外されている隠れ待機児童も約7万人います。働く女性が増えていることが最大の要因です。子育て世代にあたる25~44歳の女性の就業率は、2013年の69.5%から、2019年には77.7%に高まりました。政府は2025年には82%になるとみています。
保育の受け皿は、一部の認可外施設も含めると今年4月時点で約314万人分で、この7年間で70万人分以上増えました。全国的にみれば、受け皿は申込者の総数を超えています。ただ待機児童問題は地域差が大きく、施設が空いている地方もあれば、若い世代の流入で整備が追いつかないところもあります。地域の実情に合わせた対策が必要です。
良質な保育や幼児教育が、子どもの発達に良い影響を与え、社会に利益をもたらすことは、様々な研究で報告されています。待機児童解消だけがゴールではありません。保育の質を向上させるためにも、保育士の人材確保が大切です。施設はあっても人がいなければ保育はできません。保育士は人手不足が続いています。資格を持っていながら保育所などで働いていない潜在保育士が約95万人いるとの推計もあります。処遇改善に加え、短時間勤務など柔軟な働き方をしやすくする、掃除などを担う補助者をおくといったきめ細やかな取り組みが必要になります。
働きながら子育てしやすい社会にすることは日本の大切な課題です。保育サービスは子どもの健やかな成長も支えるインフラです。コロナ禍の中で親子の不安を和らげるためにも、保育の充実が求められています。

 

(2020年10月19日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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