急性期医療の実態

急性期医療とは、重い病気や大けがを抱えた患者の症状が安定するまで、短期、集中の手厚い治療やケアを提供する医療を言います。急性期を経て、回復期病床でリハビリを受けたりして退院します。長期療養する場合は、慢性期の病院に移ります。平均入院日数は慢性期のおよそ1年に対し、急性期は約2週間と短く、救急や集中治療室(ICU)など、より緊急度の高い患者を診る高度急性期もあります。

急性期医療は、検査や投薬治療、手術などに多くの医療スタッフ、設備を必要とします。看護師は病床あたりで慢性期の2倍の人数が配置されます。その分、医療費も高くなり、大学病院や地域の中核病院が担うことが多くなっています。若い医師や看護師が多くの症例に触れて、専門性を高める研修の場ともなります。夜勤や休日勤務があり、労働負荷は高くなっています。
急性期医療は、感染症や精神疾患向けなどを除いた一般病床の6割を占め、日本の医療提供体制の中核を担っています。ところが、日本経済新聞らの分析によれば、急性期医療を担う病床の35%が、十分な診療実績を欠く名ばかり病床であることが指摘されています。特に中小規模の病院に多く、急性期病床の数が100床未満の病院に限れば65%が実績の少ない名ばかりでした。病床を埋めるため、緊急性が低いリハビリ治療や人工透析などが多く行われています。
手厚い報酬を受け取りながら手術やがん治療などの実績が乏しく、新型コロナウイルス患者の受け入れも少ないのが実態でした。急性期病床が小規模病院に分散し、各病院がぎりぎりの人員で運営せざるをえない状態では本来の機能は果たせません。コロナ下では、中小病院でコロナ患者の受け入れが進まないという形で、この弊害が露呈しています。

(2022年6月19日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。