急性骨髄性白血病の移植

治療薬が効きにくいタイプの急性骨髄性白血病(AML)向けに、新しい分子標的薬が相次いで承認されています。骨髄などの造血幹細胞移植も、合併症を予防しやすくなり、治療の選択肢が広がってきています。AMLの治療は、まず複数の抗がん剤を使い、骨髄中に白血病細胞がなくなり白血球や赤血球などの数が正常範囲になる寛解を目指します。その後、半数近くの人は骨髄や臍帯血などの造血幹細胞を移植する2本立てで治療をすることになります。
FLT3遺伝子に変異があるのは、AML患者の2~3割とされています。この変異があると、白血病細胞を無制限に増やすスイッチが入ってしまいます。これまでは変異がある場合、抗がん剤を使っても、骨髄移植ができる状態まで白血病細胞を抑えることが困難でした。しかし、2018~2019年にかけて、国内でFLT3阻害剤のギルテリチニブとギザルチニブが承認されました。白血病細胞を無制限に増やす信号を妨げる作用があるとされ、臨床試験では約3~5割が寛解状態になり、移植につながる症例が増えてきています。
急性骨髄性白血病の場合、薬だけで治るのは約10%に過ぎません。化学療法で寛解まで白血病細胞を減らした後、他の人から全ての血液の元になる造血幹細胞を移植して完治を目指します。兄弟姉妹や親子など血縁者間や、骨髄バンクなどを通じた非血縁者間での造血幹細胞移植は、2017年には約3,700件に及んでいます。20年前と比べて3倍以上に増えています。主な理由は、臍帯血バンクの充実や、白血球の型であるHLAが半分だけ一致した血縁者間でのハプロ移植の普及です。
ハプロ移植では、移植したドナーの細胞が患者の体を攻撃して、肝臓や肺などに炎症が起こる移植片対宿主病(GVH病)が生じる可能性があります。近年、移植後にシクロフォスファミドなどの抗がん剤を使って、GVH病を予防する方法が登場しています。このためハプロ移植は2010年以降急増し、現在は年に約500件実施されています。

 

(2020年1月22日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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