感染妊婦の出産の流れ

新型コロナウイルスに感染した千葉県の妊婦が、8月に入院先が見つからないまま自宅で出産し、新生児が亡くなったという悲しい事件が起こりました。この問題をきっかけに、妊婦へのワクチン優先接種や、病院と行政の連携が広がっています。コロナ感染した妊婦を取り扱う病院では、一般に感染した妊婦1人の出産の際に、産科医2人と麻酔医、看護師、小児科医2人の少なくとも6人態勢で臨みます。
その手順は、まず陰圧の手術室で産科医が新生児を取り上げてへその緒を切ると、看護師が滅菌タオルにくるんで簡易ベッドに乗せ、隣の前室へ移します(①)。看護師はベッドを置いて、ドアの向こうの小児科医に声をかけて戻ります(②)。入れ替わりに小児科医が前室に入り(③)、新生児をベッドごと運んで全身洗浄などして保育器に入れます(④)。出産と新生児のケアをするスタッフが、互いに接触しないようにして感染を防ぎます。
日本産科婦人科学会は、周産期センターなどがある全国の医療機関の協力を得て、妊娠中に新型コロナに感染した妊婦180人について、症状や分娩方法、新生児の状態を調べ、中間報告として9月に公表しています。それによれば、感染した妊婦の人数は概ね、全国の感染拡大の波に比例し、約85%は無症状か軽度の症状にとどまっています。
妊娠36週までにコロナ陽性と分かったのは53人で、このうち無症状・軽症~中等症で、出産までに陰性になったとみられる45人は、感染していない妊婦と同様の通常の分娩方法で出産しています。
これに対し、臨月の36週以降に陽性とわかった32人のうち、20人は感染を理由に帝王切開を選択しています。他の12人は、逆子など感染以外の理由の帝王切開も含めて通常の分娩でした。流産や死産、妊婦の死亡はなく、感染した新生児もいませんでした。しかし、陽性判明から2週間以内の妊婦から生まれた新生児の9割は、新生児集中治療室などで母親から隔離されています。このうち3分の2は人工乳だけ与え、母乳と人工乳の混合が4分の1弱、母乳のみで育てられた新生児は約1割にとどまっています。

(2021年10月17日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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