感染症病床の地域格差

新型コロナウイルス感染症は、指定感染症となりました。そのため、陽性者は、無症状や軽症患者であっても、陰性が確定するまで長く強制措置入院させなければならなくなり、感染者数の急増に伴い、中等症や重症の患者で集中的な治療を必要とする患者を入院させる病床が足りなくなるという問題が起きました。一時期、東京や大阪で深刻な問題になりました。
病床の数で言えば、日本は世界でも群を抜いて多くなっています。人口千人当たりの病床数は、スウェーデンは2.2床、英国は2.5床、米国は2.8床です。日本は13.1床と、OECD加盟国(平均4.7床)の中で最も多くなっています。今回の新型コロナの感染拡大で露呈したのは、わが国では病床数が全体として多いのに、それがうまく機能していないことでした。わが国の感染症病床数の地域的偏在は大きく、今後は第2波の到来に備えて過剰な病床削減しつつ、必要な医療設備の整備を急ぐ必要があります。
コロナ禍で問題となったのが、ICU病床の不足です。人口10万人あたりの日本のICU病床数は約5床で、米国約35床、ドイツ約29床、イタリア約12床に比べて極めて少ない現状です。深刻な感染症対策に必要な整備を進めることが急務であり、特に人口が多い都市部で重要です。感染症患者が多くない時期には、重症者を受け入れるキャパシティを多くしておくと、固定費用がかさむことになります。したがって、感染症患者の急増に対する初動で支障が出ない程度に恒久的なキャパシティを整えておくことが必要です。それで受け皿の時間を稼ぎつつ、臨時病床をつくって増加した感染症患者を受け入れる体制を準備しておくことが大切です。病床機能の分化と連携を進めることで、今後の第2波や第3波に対応すべきです。

(Wedge June 2020)
(吉村 やすのり)

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