新型コロナによる嗅覚障害

新型コロナウイルス感染の初期症状として、嗅覚障害が注目されています。鼻がつまっていないのに、においだけ感じなくなるという症状は新型コロナの特徴です。人が鼻から息を吸うと、空気は下鼻甲介と呼ばれるひだの周囲を通って気道や肺へと流れます。風邪の場合は、下鼻甲介が腫れて鼻呼吸ができなくなり、においも分からなくなります。
一方、空気中にあるにおいの分子は、上鼻甲介という別のひだの周辺の嗅裂にある嗅神経細胞に届くことで、脳ににおいの情報が送られます。嗅神経細胞が新型コロナからダメージを受け、情報を受け取れなくなっている可能性があります。上鼻甲介周辺にある嗅粘膜の表面は、新型コロナが侵入しやすいたんぱく質が多くあるとされています。
嗅覚異常を訴えた人のCTでは、上鼻甲介周辺だけが炎症を起こしていました。突然においがしなくなった場合は、いきなり耳鼻科に行くことなく、コロナに感染した可能性を意識することが大切です。
新型コロナによる嗅覚障害は、人によって数カ月治らないのも特徴です。本来と異なるにおいがする異嗅症という後遺症も確認されています。異嗅症はインフルエンザなどでも起こり、焦げたにおいは典型的です。

(2020年11月8日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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