新型コロナに伴う血栓症

新型コロナウイルス感染症の患者に起きる血栓症は、欧米に比べて症例は少ないのですが、重症者では頻度が比較的高くなっています。肥満などがリスク因子とみられ、回復途中でも注意が必要です。予防や治療には投薬が主流ですが、副作用の問題もあり、新薬を目指す研究も進んでいます。欧米では、新型コロナ患者は高頻度で血栓症を発症しています。オランダの報告では、集中治療室に入院した患者の約4割が、血栓予防のために抗凝固療法を受けていたのにも関わらず血栓症を発症しています。
厚生労働省の研究班によれば、軽症や中等症では0.59%でしたが、人工呼吸器やECMOを必要とする重症者では13.2%に達しています。海外よりは低いのですが、他のウイルスに比べると高頻度となっています。血栓症を発症した105人のうち、足などの血管に血栓ができる深部静脈血栓症が41人、心臓から肺に血液を送る血管が詰まる肺血栓塞栓症が29人と多くなっています。血栓症になった患者では、体格指数(BMI)が高い傾向があり、入院中に人工呼吸器が必要になるなど重症化しやすくなっています。
予防や治療には、血液の凝固因子の働きを妨げる薬などを使うのが一般的です。ただ出血が起こり、投与を中止した事例が報告されており、副作用に注意しなければなりません。新薬の研究も進んでいます。新型コロナに感染して血管が傷つくと、血管の細胞から特定のたんぱく質が大量に放出され、血液を固める働きを促していることから、このたんぱく質の働きを抑える抗体を作り、動物実験で安全性や効果を検証中です。

(2021年2月22日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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