新型コロナウイルスによるサイトカインストーム

新型コロナの重症化の原因に、免疫が暴走するサイトカインストームが考えられています。サイトカインとは、細胞から分泌され、様々な働きを持つたんぱく質の総称です。ウイルスが細胞に侵入すると、免疫にかかわるサイトカインの働きが強まり、免疫細胞を活性化して、ウイルスに感染した細胞を攻撃します。感染症に罹ると、発熱やだるさ、筋肉痛などが起こります。これはサイトカインが働き、病原体と戦っている証拠です。しかし、何らかの理由でサイトカインが増えすぎると、免疫の働きが暴走し、サイトカインストームと言われる状態になります。
免疫が暴走しないように体内には複雑な仕組みが備わっていますが、ひとたびサイトカインストームが起こると、暴走した免疫が、感染した細胞だけでなく、正常な細胞も傷つけてしまいます。サイトカインストームでは、血液が固まりやすくなる恐れもあり、血流が止まる血栓の原因にもなります。肺では、毛細血管をつくる細胞が傷ついたり、血管が詰まったりして、必要な酸素が吸収できなくなる急性呼吸不全になってしまい、人工呼吸器などが必要になることがあります。心臓、肝臓や腎臓など、様々な臓器で正常な細胞が傷つき、多臓器不全で最悪の場合は死に至ります。

新型コロナの治療薬と考えられているレムデシビルやアビガンのような抗ウイルス薬では免疫の暴走は止められません。そこで免疫を抑える薬を使えば新型コロナ患者の重症化を止められるのではないかと期待されています。そのひとつが、アクテムラ(トシリズマブ)です。もともと、免疫が誤って自分の体を攻撃してしまう、関節リウマチなどの薬として開発されました。同じ仕組みの薬は他にもあり、ケブザラ(サリルマブ)などが、新型コロナの治療に使えないか調べられています。

(2020年5月21日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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