新型コロナウイルスの変異

新型コロナウイルスが感染した細胞内で増える時、自分のRNAをコピーしますが、その時、ある塩基が別の塩基に置き換わったり、欠落したりするミスが起きることにより、変異ウイルスができます。新型コロナは、インフルエンザウイルスなどと比べてミスが少ないとされ、ミスが受け継がれる頻度は、1カ月で約3万個の塩基のうち1~2個と言われています。塩基の並びが変わると、その情報をもとに作られ、たんぱく質を構成するアミノ酸の並びも変わって、たんぱく質の構造まで変化する場合があります。
中国・武漢市で初めて確認されたウイルスはほぼ検出されなくなり、D614Gと呼ばれる変異ウイルスに取ってかわり、日本でいまも感染が続くウイルスに受け継がれています。D614G変異では、塩基の並びが変わったことで、ウイルス表面のスパイクと呼ばれるたんぱく質をつくる614番目のアミノ酸がアスパラギン酸(略号D)からグリシン(G)に変わり、それによりスパイクの構造も変わりました。この変異でウイルスの細胞への侵入効率が、変異がない場合に比べて約3.5倍になりました。
遺伝子情報を調べることは、リスクに高い変異ウイルスにいち早く気づくことにも役立ちます。英国の変異株には、N501Yという変異があり、スパイクとヒト細胞の受容体との結合が強まるとされています。そしてその変異を持つウイルスが実際に検出され、感染が急拡大していることでジョンソン首相の警告につながっています。

(2021年3月1日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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