新型コロナウイルス向けのワクチン開発

新型コロナウイルス向けのワクチン開発が世界で加速しています。英製薬大手のアストラゼネカは、初期の臨床試験(治験)で強い免疫反応を引き出したと発表しています。米国や中国企業なども独自のワクチンの治験を進めています。各社とも年内の実用化を視野に入れていますが、有効性が低い可能性もあり、供給への課題は残されたままです。
一般的なワクチンの場合、有効性は8割以上とされていますが、WHOはパンデミックを考慮し、コロナワクチンについては求める目安を50%としています。有効性が低いワクチンは、ADE(Antibody-dependent enhancement,抗体介在性感染増強)と呼ばれる副作用を引き起こす恐れがあります。体内に十分な抗体ができていない状況下で、ウイルスの増殖が速くなる現象で、ワクチンを接種した人の方が重症化するリスクが指摘されています。抗体が機能を発揮する期間も不明なままです。体内の防御抗体は、2~3カ月しか持たないかもしれないとの報告もあります。
パンデミックという状況下で、迅速な開発は必要ですが、早くできたものが必ずしも最高のものとは限りません。効果の検証が不十分なワクチンが市場に出回るのはむしろ危険です。ワクチン開発にとって最も大切なことは安全性の検証です。

(2020年7月22日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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