新型コロナウイルス感染症に対する薬剤投与

厚生労働省の診療の手引きによれば、新型コロナウイルスの患者の重症度は軽症、中等症1、同2、重症の4段階に分かれます。治療薬は現時点では、抗ウイルス薬、ステロイド、抗凝固薬が使われることが多くなっています。中等症であれば、抗ウイルス薬のアビガンが研究の枠組みで使われることがあります。アビガンは、新型インフルエンザの治療薬として国に承認されています。製薬企業が新型コロナでも臨床試験(治験)を実施し、国に承認申請しています。
日本集中治療医学会と日本救急医学会の指針では、アビガンは軽症者には弱い推奨とする一方、中等症や重症の患者には推奨するかどうか判断していません。しかし、今も中等症以上の患者に使う医師はおり、指針の標準的な考え方よりも個別の判断に基づく治療が良い結果を出すことはよくあります。
一方、指針は中等症以上の患者へのステロイドの使用を強い推奨としています。患者の体内では、サイトカインと呼ばれるたんぱく質が多く分泌され、免疫が暴走して正常な細胞を傷つけることがあるとされ、ステロイドはこれを防ぐ効果があると考えられています。少量を使うことを推奨しています。急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の患者に対しては、呼吸状態が悪くなってすぐに大量のステロイドを短期間で使うことで、重大な副作用がなく死亡率を下げる可能性があります。適切な時期に適切な量を使うことが重要です。

(2020年11月6日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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