新型コロナウイルス感染症に特化した治療法の開発

新型コロナに特化した様々な治療法の開発のための研究が進められています。回復した人の血液に含まれる血漿という液体成分を使った治療法が検討されています。回復者の血漿には、新型コロナウイルスに対抗する抗体が含まれており、この抗体を別の患者に投与すれば、治療できる可能性があります。米国の食品医薬品局(FDA)は、血漿療法の入院患者への緊急使用を許可しました。臨床試験で7万人以上が治療を受け、生存率が35%向上する効果が確認されたとしています。しかし、米国立衛生研究所(NIH)の専門家委員会は、血漿療法について標準的な治療法と考えるべきではないとする声明を公表しています。
武田は、この抗体を取り出して濃縮、精製した高度免疫グロブリン製剤を開発中です。国立国際医療研究センターも、患者に回復者の血漿を直接投与する臨床研究を計画中です。抗体を人工的に作製する試みもあります。モノクローナル抗体と呼ばれ、マウスなどの動物にウイルス分子(抗原)を注射して抗体を作らせ、それを人工的に培養して作製します。
新型コロナの治療では、エボラ熱の治療薬候補のレムデシビルや、関節リウマチや皮膚炎などの治療に使われるデキサメタゾンといった既存薬が活用されています。国内で期待の高いファビピラビルは、新型インフルエンザの治療薬です。現時点では1種類だけで必ず効く治療薬はありません。新しい治療法や薬が開発されて治療の選択肢が増えれば、より多くの患者を救えるようになると期待されています。血漿を使った治療法は技術が確立しており、比較的短期間で開発できますが、血漿を提供してくれる協力者がどれだけ得られるかも課題です。

(2020年9月9日 毎日新聞)
(吉村 やすのり)

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