新型コロナウイルス重症患者に対するエクモの活用

新型コロナウイルスの重症患者の最後の砦となる体外式膜型人工肺(エクモ)が、機器はあっても人材不足でフル稼働できない状態が続いています。40~50代の重症化率が上昇し、エクモを導入する患者の若年化が進んでいます。医療現場は人工呼吸器の活用でしのいでいますが、医療資源の集約化の課題は解消されていません。

エクモは全国で約1,400台ありますが、フル稼働するためには人材が不足しているのが実情です。全国でいま約130台が、新型コロナ対応で稼働しており、第4波のピークの76台より約50台多くなっています。昨年より確実にエクモの実施数は増えています。さらに人工呼吸器の治療技術を向上し、エクモを使わずに回復する患者が増えています。わが国は、世界一高い救命率を維持しています。
患者の回復を助けるため、肺機能を代替するエクモは高度な技術と経験が不可欠です。昨年度後半は、感染拡大でオンライン研修が増え、実地の研修ができていません。さらに独り立ちするには、近隣の専門医の指導を受けながら覚えていく必要があり、育成は急にはできません。欧米ではコロナ流行前から、エクモなどを扱う集中治療医が多く、米国は約2万9千人、ドイツは約8千人に対し、日本は2千人のみです。
欧米では病院は高度医療に特化しており、育成が進んでいます。日本は集中治療室(ICU)があっても、手術後の管理などで各診療科の主治医が担当することが多く、専門医が十分に育たっていません。重症患者が増加する中、医療現場では人工呼吸器の治療を優先しています。エクモを使うと多くのスタッフが必要で、人工呼吸器を管理する人材が足りなくなってしまいます。機器があっても人材が不足する中、重症者の増加が医療現場の逼迫に拍車をかけています。

(2021年8月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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