新型コロナリスクの評価―Ⅰ

死者数と活動制限
7月9日時点で新型コロナウイルスによる死者は982人で、これは世界的にみて非常に少数です。わが国では、人の移動を完全には制限できず、ウイルス流行の余地を残すことになったにもかかわらず、人口比でみた新型コロナウイルスの死者は、米欧の数十分の一にすぎません。また、新型コロナウイルスによる死者数は、季節性インフルエンザによる死者数をも下回っています。ワクチンがあるのにインフルエンザでは、例年12月から翌3月までの4カ月間で3,000人程度が亡くなっています。しかし、これまでの新型コロナウイルスによる死者はその3分の1の規模です。
これだけ低い死亡率にもかかわらず、感染予防目的でさまざまな活動制限を行ったため、IMF(国際通貨基金)の見通しでは、今年の日本の成長率はマイナス5.8%と、リーマンショック後を上回る落ち込みになっています。経済的損失だけではなく、勉学や課外活動の機会を奪われ、社会・地域との接点を失った子どもたちの成長にも大きな負の影響を残しました。来るであろう第2波でも低い死亡率が続くのなら、緊急事態宣言の発動は慎重にあるべきです。同時に、わが国や東アジアの諸国で死亡リスクが低い理由を検討すべきです。

 

(2020年7月18日 週刊東洋経済)
(吉村 やすのり)

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