新型コロナ禍での超過死亡

わが国は、欧米に比べ人口当たりの新型コロナ死者数が極端に少なく、PCR検査の体制が整っていないため、正しい診断を受けずに死亡した隠れコロナ死が多数いるのではないかとの指摘がありました。しかし、厚生労働省の研究班は、7月末にこうした隠れ死が極端に多かったとは考えにくいと発表しています。国内で新型コロナの流行が始まった1~4月の超過死亡を計算すると、一部の都県では超過死亡がみられましたが、国レベルでみると、新型コロナによる死者の報告数よりも少ない数字で、報告数以外の隠れ死が大きくあるとは言えない結果です。
超過死亡は、半世紀前にWHOがインフルエンザ流行の影響を正確に調べるために提唱しています。死者数と比べて、超過した死者数(超過死亡)があれば、流行の直接・間接の影響で増えた死者と推定できます。インフルエンザは、肺炎で死亡する人もいれば、感染して持病が悪化する人もいて、医療機関から報告されるインフルエンザの死者数だけでは、全体の影響は分かりません。そこで超過死亡で、流行期の大まかな死者数を数えます。
欧米は、新型コロナが直接の死因も多く、超過死亡のピークが明確に出ています。日本は隠れ死があったとしても欧米とは異なります。今後は失業の影響で自殺などの死者が増え、超過死亡に表れる可能性もあります。死者数や死因の変動は、健康面と経済面の両方で注意してみる必要があります。

(2020年8月22日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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