新型コロナ禍における個人情報の管理

位置情報や行動履歴など一人ひとりのデータの集積であるビッグデータが、新型コロナウイルスに対処する新たな武器になるとして、活用の動きが加速しています。強権的なデジタル監視システムを持つ中国では、政府が感染者の行動を追跡するビッグデータ分析チームを設置しています。感染者が使った交通機関の便名や座席番号、駅や空港の出入場記録を集めて、行動を割り出しています。監視カメラの映像をもとにしたとみられる分刻みの動きも公表し、さながら指名手配犯のようです。こうして73万人以上の濃厚接触者を割り出しています。
韓国でも街中の監視カメラが感染者の行動を追っています。クレジットカードの利用履歴やスマホの位置情報を組み合わせ、感染者の行動履歴を10分以内で特定します。自宅隔離中にスマホを持たずに出歩く感染者が増えたため、隔離命令を守らない感染者には、任意とはいえ電子腕輪を着けさせています。中国や韓国においては、ウイルスの拡散防止に役立つならば、自分の人権をある程度犠牲にしてもかまわないという立場です。
わが国では個人情報保護の立場から、位置情報や行動履歴についての追跡については慎重な立場を取ってきました。現在わが国で検討されているのが、個人情報の徹底排除した形でのデジタル監視システムの開発です。Bluetoothを通じ、一定時間、近距離にいる同じアプリを使う他人と電話番号を暗号化したデータを記録し合います。その際に記録する情報に、定期的に変わる符号を使い、サーバーには個人特定につながる情報が残らないようにします。陽性であると判定された感染者の近くにいた記録のあるスマホを持っている人に、時間や場所、感染者名を伏せた形で通知が届くことになっています。陽性を登録する作業は、行政職員に限られているため、行政との連絡のための電話番号の入力などが想定されています。わが国で考えられている方法でも、完全な個人情報の排除には限界があります。

(2020年5月11日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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