日本の研究力の低下

文部科学省の調査によれば、科学論文の影響力や評価を示す指標で、インドに抜かれて世界10位に落ちました。10位になったのは、研究分野ごとに引用数がトップ10%に入る注目論文の数です。注目論文の国別の世界シェアをみると、中国が24.8%で、米国を初めて逆転して世界一に立ちました。米国は22.9%で、米中で世界の50%近くを占めています。大きく離れて、英国の5.4%、ドイツの4.5%などが続き、日本は2.3%にとどまっています。
日本の低迷は、最近始まったことではありません。国際ランキングの表を見ると、特に2000年代半ばからの急落が目立ちます。1980~1990年代前半は、米国、英国に次ぐ3位を維持していましたが、1994年にドイツに抜かれ、2005年までは4位になり、その後順位を落とし続け、ついに2桁台になってしまいました。
注目論文のうち引用数が上位1%のトップ論文もほぼ同じ推移です。2000年代前半まで長く4位でしたが、今は9位に落ちました。研究開発の活発さを示す全体の論文数もかつては米国に次ぐ2位でしたが、現在は4位です。低迷のきっかけに、2004年の国立大学の法人化が挙げられます。その後、国から配られる大学の運営費に関する交付金は年々削減されていき、大学は人件費や管理費の抑制を進めたと考えられています。
将来の国の研究開発を下支えする博士号取得者も減少しています。米中は年々その数を伸ばしており、英国や韓国も2000年度に比べて2倍超となっています。ドイツもフランスも横ばい水準を維持しています。日本では、2006年度の約1.8万人をピークに、減少傾向が続いており、近年は約1.5万人で推移しています。影響は大学だけではなく、企業の研究力にも及んでいます。米国では、企業の研究者のうち博士号所有者の割合が、ほぼ全ての業種で5%を超えています。

(2021年8月30日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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