日本人の留学生数の伸び悩み

経済協力開発機構(OECD)が海外の大学をはじめとする高等教育機関に籍を置く留学生数を集計したデータによれば、日本人の留学生数はここ最近伸び悩んでいます。2018年は5万8,700人で、ピークの2004年と比べ3割ほど少なくなっています。日本が内向き志向になり、国を挙げて英語教員や若者を海外に出す努力をしてこなかったことが影響しています。
日米教育委員会によれば、米国への留学生は1994~1997年度に国・地域別で日本が1位でした。しかし2019~2020年は、中国やインド、韓国、ベトナム、台湾などに抜かれ、8位に後退しています。米国の大学授業料は年々高騰しています。比較的安い州立大学でも、生活費を含めた費用は、年間600万~700万円が相場になります。
日本の可処分所得は、先進国の中で見劣りしています。OECDのデータで、2017年の人口1人当たり家計可処分所得で、日本は主要7カ国(G7)中最低の2万9,000ドルでした。政府は、OECD基準の留学生を2022年度までに12万人へと倍増する目標を立てていますが、奨学金制度の拡充だけでは限界があります。
留学生を再び増やすには、社会の仕組みや資金負担を官民で変える必要があります。入学・卒業時期の多様化・柔軟化を進めることも重要です。秋採用や通年採用の拡充などは徐々に進んでいますが、留学の減少傾向に歯止をかける効果はまだ見えていません。コロナ収束後の日本にとって海外で通用する人材の有無は中長期の成長力を左右します。

 

(2021年8月5日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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