日本型雇用の見直し

企業が働く人を雇う雇用システムには、終身雇用と年功賃金という2つの特徴があります。大きな企業の社員はこれまで、大学を卒業すると同時に会社に採用されて、定年で退職するまで長く働き続ける終身雇用が、一般的と考えられてきました。また、給料がその会社で働いている年数や働く人の年齢に応じて段階的に上がる仕組みが年功賃金です。勤続年数が長くなるほど給料が高くなるから、多くの人はその会社に長く居て真面目に働いてきました。

近年経済界は、賃金カーブと呼ばれる年功賃金の上がり方を見直そうとしています。多くの日本企業では、社員が若い間は仕事で貢献した度合いに対して給料が低く抑えられている半面、長く働くうちに貢献度を上回る給料が支払われる仕組みになっています。貢献度と賃金の伸びが一致するのが40歳前後です。企業はここへきて、中高年の給料を引き下げる代わりに、浮いた分を若い社員の賃金を増やすのに使おうとしています。若いという理由で賃金を低く設置していると、優秀な人は待遇の良い海外企業に流れてしまいます。
労働者側が、人事評価に応じて賃上げの幅を調整する新しい賃上げ方法が提案されています。会社も労働者もこれまでの日本型雇用の良いところは残しつつ、世界的な大競争時代を勝ち抜く雇用のルールをつくろうとしています。働く人は、今後スキルや能力を磨き続けて会社に示す必要が出てきます。デンマークなど北欧の国では、企業が従業員を自由に解雇できる代わりに、労働者が新しいスキルや能力を身に付けられるよう社会が支援しています。

(2020年3月7日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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