東京五輪の運営経費

延期決定前に1兆3,500億円と見積もられていた経費は、昨年12月に組んだ予算でコロナ対策費がかさみ、1兆6,440億円まで跳ね上がっていました。しかし、実際にはほぼ無観客となったことで、対策費が480億円と半減し、大幅に縮減されました。また仮設設備の仕様を引き下げるなどした結果、関連費用を569億円削減できました。
経費は昨年予算の1割強にあたる計1,910億円減り、総額で1兆4,530億円となる見通しです。一方で、昨年の予算で7,210億円を見込んでいた収入は、12%減の6,343億円となりました。900億円を予定していたチケット収入が、4億円に落ち込んだことが主因です。
五輪は、開催都市が過大な負担を負わなければならない構造的な問題が大きくなっています。競技会場は多くの観客の受け入れ、放送機材の設置を充実させるなど高スペックな仕様を求められ、大規模な選手村を設ける必要があります。主催者であるオリンピック委員会(IOC)のメンバーらを厚遇するため、今大会では自粛されましたが、大会期間中は頻繁にパーティーが開催されるなど、資金の浪費が繰り返されます。
派手になっていくばかりで、スポーツの価値を伝えるという本来の趣旨を見失ってしまっています。規模を縮小しても大会を成功できるということを、日本は今後の五輪のためにメッセージとして発信していく必要があります。

(2021年12月23日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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