東京都の少子化対策

東京都は2019年12月に、2040年代に目指す東京の姿を示した未来の東京戦略ビジョンを公表しています。そこでは、一人の女性が一生に産む子どもの数である合計特殊出生率を、2.07に引き上げるという目標を掲げています。しかし、現実は厳しく、2019年の東京の出生率は1.15に過ぎません。これまで東京都は、少子化対策として、待機児童対策に注力してきました。2020年4月時点の都内待機児童数は、約2,300人であり、就任前の2016年4月の約8,400人に比べて大幅に減少しています。
子どもを持つ持たないは個人の価値観によることは言うまでもないことですが、子どもを持ちたいのに様々な理由で持てない人を減らすのは政治・行政の役割です。これまでの内閣府の調査によれば、理想とする数の子どもを持たない理由のトップは、子育てや教育にお金がかかりすぎるからになっています。
都は、育児用品を選べるギフト券の配布や、私立高校の実質無償化などで経済的負担を緩和する対策を打っています。認可保育所は3歳以上は無償で、低年齢児も保育料が比較的低くなってきています。出生率向上に向けて保護者の負担を軽減するため、都と区市町村が支援を強化する必要があります。東京都の少子化対策は、わが国の少子化危機突破のカギとなることは間違いありません。待機児童の大幅な減少は評価に値しますが、都会でも若い世代が子どもを持つことができる環境を作ることが、第2期小池都政の大きな課題となります。

(2020年7月10日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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