森林の高齢化

全国の人工林の過半が50歳を超え、高齢化が目立っています。国内の林業は、安価な輸入木材に押されて産業競争力が低下し、伐採や再造林が進まない負の連鎖に陥っています。手入れされていない放置林は、台風などの災害に弱く、二酸化炭素(CO2)の吸収源としての効果も期待できません。森林の荒廃に歯止めをかけなければ、地域の安全確保や脱炭素の壁となる恐れが出てきます。
人工林の多くは、第2次世界大戦後に国土復興のために植えられました。50歳を超える森林は500万haを超え、人工林全体の半分以上を占めるに至っています。林野庁の調査によれば、日本の森林が吸収するCO2は、2014年度の5,200万tが直近のピークで、2019年度は約2割少ない4,300万tまで減ったと推計されています。CO2を取り込む量は、樹齢40年を過ぎて成長が落ち着くと頭打ちになると考えられています。

手入れされて一定の日照などを確保できる森林でなければ、CO2吸収源として国際的に認められません。国内の人工林約1,000万haのうち、既に2割程度は吸収源に算入できないとの見方もあります。温暖化ガスの排出削減というと、再生可能エネルギーなどの話になりますが、林業も本来軽視できません。中国は現に大量の植林に動いています。今のペースで森林が老いていくと吸収源の役割を果たせなくなり、脱炭素の足枷になりかねません。

(2021年10月10日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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