次世代ワクチンの開発

新型コロナウイルス感染症の流行の長期化を見据え、国内外でより使いやすい次世代ワクチンの開発が急ピッチで進んでいます。鼻に噴霧したり食べたりして注射不要のワクチンや、簡単に製造でき安定供給しやすいなどの新タイプのワクチンの臨床試験が始まっています。世界的なワクチン不足の解消やワクチン忌避の減少などにつながる可能性もあります。
次世代ワクチンは、病原体の一部を体内に入れる仕組みや接種方法などが現行と異なる開発中のワクチンです。注射の必要がない、現行よりも安価といった予防効果を高めやすい、複数のウイルスに効果を持つなど、機能面の違いもあります。WHOによれば、次世代ワクチンを含め約300種類の新型コロナワクチンが開発段階にあります。

英オックスフォード大学は、鼻に噴霧するワクチンの第1段階の治験を3月から始めています。英アストラゼネカ製のワクチンと同じものを鼻に噴霧し、安全性などを確かめる予定です。鼻から投与する鼻ワクチンの開発が相次ぐ理由は2つあります。一つは、注射不要で痛くない点です。もう一つは、より高い感染予防効果が期待できます。現在のワクチンの多くは、遺伝情報を運ぶウイルスやメッセンジャーRNA(mRNA)などを筋肉注射して抗体などを作り、全身に行き渡らせて発症や重症化を防ぎます。鼻ワクチンを噴霧すると、鼻や喉、気管の表面の粘膜中に抗体が多くできます。粘膜から体内に侵入するウイルスをブロックし、感染防御できる可能性が高くなります。

米ウォルター・リード陸軍研究所は、フェリチンというナノ粒子を使った新しい仕組みのワクチンを開発し、4月から第1段階の治験を開始しています。フェリチンは体の中で鉄分輸送などをするたんぱく質で、集合しやすい性質を持っています。コロナウイルスの一部のたんぱく質を組み込んでいます。この粒子がコロナウイルスと似ているので高い免疫反応を起こすと期待されています。

新型コロナの流行が収まっても、また新たな新興感染症は現れ、パンデミックは今後も必ず起きると考えられます。コロナワクチンで浮き彫りになった接種や供給の難しさを克服するために、次世代ワクチン開発の成功の有無が、感染症との闘いの行方を左右するカギとなりそうです。

(2021年8月17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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