母乳育児について

 母乳は赤ちゃんの成長を助けるミネラルや栄養が多く含まれています。特に産後10日くらいまでの間で出る初乳は、通常の成乳より黄色っぽくクリーム色をしてトロっとしています。初乳には、タンパク、ビタミン、ラクトフェリン、細菌感染から守る抗体(IgA抗体)などの免疫成分が多く含まれています。特にIgA抗体は最近やウイルスかの進入を防ぎ、赤ちゃんを風邪やアレルギーから守ります。そのため、初乳はできる限り与えた方が良いと思われます。授乳により、赤ちゃんの脳の発達を向上させ、青年期や大人になってからの肥満や糖尿病を減らすといった効果がみられます。
 授乳は赤ちゃんだけではなく、ママにもメリットがあります。授乳は愛情ホルモンというオキシトシンの分泌を増加させ、赤ちゃんとママとの絆を深めます。またオキシトシンは、分娩後の子宮の復帰(元の状態に戻る)を促進します。また授乳することにより、母体の体重を妊娠前の状態に戻すことにも役立ちます。
 母乳は赤ちゃんの発育に良いことは自明の理です。しかし、母乳を与えなければ母親失格だと悩むママが多いのは問題です。欲しがった時に欲しがるだけあげるのが母乳分泌を促す一番の方法です。ただし、母乳が出ないからといって引け目を感じたり、駄目なママと落ち込み、産後うつに発展することがありますが、ママが追い詰められては本末転倒です。母乳が出ない時は、粉ミルクを使用しても何ら問題はありません。ミルクをあげることだって立派な育児です。母乳育児で大切なのは、量よりも子どもの心身の成長のために母乳をあげたいというママの愛情です。
 私の家内の場合は、母乳がほとんど出なかったことに引け目を感じるヒマなどなく、精一杯働いていました。産後8週で通常勤務に戻り、当直もしていました。母乳が出なかったため、子どもは母乳を飲むのを嫌がりました。そのため、生後1ヶ月頃より粉ミルクのみで育ちました。母乳が与えられるような環境整備は必要ですが、必ずしも全ての女性が母乳を与えられるわけではありません。乳幼児期に身近な大人と触れ合い、愛情や信頼を感じる中で子どもを養育することが大切です。母乳育児は触れ合いの第一歩です。完全母乳育児は理想ですが、できないからといって悩む必要はありません。

(2018年1月4日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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