民間病院集中再編の必要性

政府は、団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者になる2025年度を目標に、病気が発症した直後の急性期の患者向けの病院ベッドを減らす地域医療構想を進めています。患者7人に対して看護師1人を配置する急性期病床は、過去の診療報酬改定で高価格に設定されています。医療費が膨らむ要因の一つとされていますが、現時点ではその削減が進んでいません。
厚生労働省は、今年9月に市町村などの公立病院と日本赤十字社などの公的病院の25%超にあたる全国424の病院を再編統合について特に議論が必要として、病院名を公表しています。ベッド数や診療機能の縮小を含む再編を地域で検討し、来年9月までに対応策を決めるように求めています。
一方、民間病院の急性期ベッドにも余剰があります。病床が過剰な地域では民間病院も再編の必要性があることが指摘されています。しかし、日本医師会は、民間病院と公立・公的病院が競合している場合は、公立・公的が引くべきだと主張しています。公立病院の再編が進まなければ、民間の議論に進むべきではないとの立場です。
医療に使われるお金の総額にあたる国民医療費は、右肩上がりに増えています。2000年度に30兆円だったのが、2013年度には40兆円を突破しています。2017年度には43兆円に達しています。都道府県別に見ると、病床数が多いほど1人当たりの入院医療費が高いとの傾向もあります。医療費の抑制には、地域ごとに過剰な病床を減らす取り組みが欠かせません。

(2019年10月29日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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