父乳の夢

「父乳の夢」とは、コンサルタントの妻と派遣システムエンジニアの夫に子どもが生まれ、妻の母乳が出なくなった頃、夫の父乳が出始めます。仕事に早く復帰したい妻にかわって、夫が育児に専念するという小説です。もし父親から母乳が出たら、そんな発想の小説を発表したのは作家の山崎ナオコーラさんです。授乳や育児をめぐる男女の役割を問い直す内容です。



小説の終盤で、夫が「粉ミルクは、父親が授乳するためのものだったのかなあ。様々な人が親になれる方法だったのかもなあ」と述べています。母乳神話も粉ミルク神話もこえて、誰もが育児に関われる成熟した社会への希望だと思います。8月に国内での製造・販売が解禁された乳児用液体ミルクは、手間がかからず、育児への負担が軽くなると期待されています。男性のみならず、女性にも認められる性別役割分担意識を変えることが何よりも大切です。

(2018年11月3日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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