特別養子縁組制度を考える―Ⅰ

制度の見直し
法務省によれば、特別養子縁組制度は年間500件前後です。2014~15年度に児童相談所や民間のあっせん団体が、特別養子縁組を検討すべきだと判断しながら、断念したケースは298件にも達しています。うち46件は子どもの年齢制限が理由で成立していません。同省は、昨年7月に緩和に向け有識者の研究会を設置しています。対象年齢について、小学校卒業を基準とした12歳未満や、本人の意思の尊重を定めた民法規定に合わせて15歳未満とする案が浮上しています。諸外国では、ドイツとい英国は18歳、フランスと韓国は15歳です。特別養子縁組だと養親側から離縁はできません。
実親による養育が困難な子どもにも、生涯にわたって法的に安定した親子関係を保障すべきで、そのためには年齢にかかわらず、特別養子縁組を認める必要があります。しかし、一方では特別養子縁組が成立した後に、親とうまくいかず施設に戻ってくる子もいます。意思確認ができる年齢の子どもの場合、本人の意思確認が欠かせません。その仕組みをしっかり作ることが先決です。
特別養子縁組においては、子どもを受け入れる家庭への支援体制にも課題があります。里親には、自治体による研修や里親同士の交流会など悩みを相談する機会が設けられていますが、特別養子縁組にはそうした機会がありません。年長の子どもと関係を築くのは一般的に難しくなりがちです。そのため、特別養子縁組の対象年齢を引き上げれば、子どもとの関係に悩むケースは増える可能性もあります。子どもの安定のために、縁組後も安心できる支援体制を整える必要があります。

(2018年6月13日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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