生殖医療における親子関係―Ⅰ

 現在わが国においては、約21人に1人の割合で体外受精・胚移植を始めとする生殖補助医療によって子どもが誕生しています。生まれた子どもは、これまでに延べ40万人を超えています。不妊カップルが子どもを得る手段は、技術の進歩やグローバル化とともに広がっています。わが国で実施できなくても、海外で代理懐胎や卵子提供などの生殖補助医療を受ける人が増えてきています。卵子提供を受けたと思われる超高齢出産の女性の出産数は年々増えてきています。正式な統計はありませんが、代理懐胎の依頼者数も増加傾向にあると思われます。また、最近では、性的少数者のカップルが、自分たちの子どもを持ちたいと思うようになってきています。LGBTのカップルが子どもを持つためには、精子や卵子の提供、代理懐胎など第三者のかかわる生殖補助医療の助けが必要になります。
 そうして生まれた子どもの親は、精子や卵子の提供者なのか、それとも依頼者なのか、母親は代理で産んだ女性なのか、卵子の提供者なのか、依頼者なのかが問題となります。代理懐胎や精子提供による人工授精で生まれた子どもについて、これまで親子関係が裁判で争われてきました。メディカルプロフェッションである日本産科婦人科学会は、代理懐胎の禁止など生殖医療をめぐるガイドラインは示していますが、親子関係の規定はありません。日本には代理懐胎や卵子提供を禁止する法律はなく、日本産科婦人科学会が指針を設けているだけです。将来、親子関係のトラブルが起きる可能性も否定できません。

(吉村 やすのり)

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