生殖医療の未来―Ⅰ

はじめに
近年の生殖医療の進歩には目覚ましいものがあり、生殖現象の解明のみならず、ヒトの生殖現象を操作する新しい技術も開発されている。細胞生物学や先端生殖工学技術の飛躍的進歩に伴って、生殖医学も革命を受けつつあるといっても過言ではない。このような生殖医学の発展は、実は発生生物学や生殖内分泌学の進歩に負うところも大きい。悪性腫瘍に罹患した女性に対し、治療を行うことにより妊孕性が失われると予想される場合、未受精卵子や卵巣組織を凍結保存することが臨床応用されている。さらに着床前の初期胚から割球を取り出し、遺伝子診断をすることもすでに現実のものとなってきている。また体細胞クローン技術や胚性幹細胞の再生医療への応用は、今後の生殖医療の展開にブレークスルーをもたらすかもしれない。しかしながら、生殖医療は特に他の臓器再生医療と異なり、世代の継承に関与しており、その治療結果が個体にとどまらず、人類に継承されていくという特殊性を持っていることを忘れてはならない。

(吉村 やすのり)

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