産業医の役割

日本の正規労働者の2017年の総実労働時間は、2,026時間です。ITの発達などで、業務の効率性は高まっていますが、10年前から大きく変わっていません。週49時間以上働く人は日本は20%で、英国やドイツ、フランスより10ポイント高くなっています。現行制度では、1カ月の残業時間が100時間を超えた場合、本人が申し出れば医師からの面談を受けることになっています。6月に成立した働き方改革関連法の改正で、この要件は月80時間超に下がります。さらに、残業規制が適用されない研究開発職で働く人は、月100時間超で面談が義務化されます。

深夜に及ぶ残業が月単位で続けば、多くの人は睡眠不足になります。判断力や思考力が低下し、仕事のパフォーマンスにも悪影響が出ます。仕事のスピードが落ちれば労働時間が長くなり、また睡眠不足が深刻になるという悪循環が起きてしまいます。産業医の業務の具体的な内容や健康相談の申し出方法などを、ポスターやパンフレット、社内の電子掲示板などで、労働者に周知することも義務付けられています。働く人にとっては、産業医に面談しやすい体制が整うことで、健康リスクの高まりを事前に抑えられることになります。

(2018年10月31日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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