産科医療補償制度の現状―Ⅰ

制度の概要
高い水準にある日本の周産期医療の課題として、過酷な労働環境、医事紛争の増加がありました。分娩を扱わない医療機関の増加、産科医療の地域偏在、産科医を希望する若手医師の減少への施策が検討され、無過失補償の考え方を取り入れた産科医療分野における補償制度の創設が唱えられました。分娩に関連して発症した重度脳性麻痺事例に対し、原因分析を行い、再発防止の対策を提言するとともに、児とその家族の経済的負担を速やかに補償することが本制度の設立目的です。医療機関に過失があっても無くても、脳性麻痺という重度な障害に遭遇した家族に対して早期に補償を行うことが、無過失補償という考え方です。
脳性麻痺が発症した患者家族により申請された事例が、審査委員会で承認が得られて補償対象になった場合は、看護・介護を行う住宅改造費、福祉機器購入費、介護費用等のための補償分割金として、総額3千万円を分割して20歳まで定期的に給付されます。実際の審査件数のうち補償対象となった承認件数は、平成29年12月末現在で2,233件にのぼっています。

(2018年5月1日 日本産婦人科医会報)
(吉村 やすのり)

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