産科医療補償制度の現状―Ⅱ

原因分析と再発防止
原因分析の考え方は、責任追及を目的とするものではなく、なぜ起こったかなどの原因を明らかにするとともに、同じような事例の再発防止を提言するためのものです。診療経過の医学的評価にあたっては、脳性麻痺であるという結果を知った上で振り返って評価するのではなく、診療行為等を行った時点までの判断に基づいて、医学的観点から評価し、事象の発生時における情報・状況に基づき、その時点で行う妥当な分娩管理等は何かという観点で分析を行っています。この評価は法的判断を行うものではないため、過失の有無は判断せず、個々の医療行為について純粋に医学的に見て医療の質の高低を評価し、その具体的根拠も示すようにしています。
脳性麻痺の申請事例については、分娩機関から提出された診療録・助産録、検査データ等と児・家族からの情報をもとに原因分析委員会部会で分析が行われます。原因分析報告書は、客観的な医学的観点からの評価結果の報告として児・家族および当該分娩機関に送付されます。同時に、原因分析報告書要約版はホームページで公表されます。
個々の事例を分析した原因分析報告書をもとに、再発防止委員会は複数の事例より見えてきた傾向、知見などをまとめ、再発防止策の提言を行っています。ホームページでの公表とともに再発防止に関する報告書の配布などを行い、国民、分娩機関、関係学会、行政機関等に情報を提供しています。これまで、分娩中の胎児心拍数聴取、新生児蘇生、子宮収縮薬、臍帯脱出、急速遂娩など20項目近くの分析結果と提言をまとめてきています。

(2018年5月1日 日本産婦人科医会報)
(吉村 やすのり)

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