男性国会議員の無理解に憶う

 ある自民党の国会議員が、「必ず結婚式では、新郎新婦に3人以上の子どもを産み育てて頂きたいとお願いする」などと語ったとの報道があった。「結婚しなければ子どもが生まれません。人様の子どもの税金で老人ホームに行くことになります」とも話しています。批判を受けて撤回されましたが、御自身の発言に対し、全国から賛同、激励が多数寄せられたと述べています。3人以上産んでほしいとお願いしたとしても、若い世代のカップルが子どもを産めるわけではないことは自明の理です。政治家としてなすべきことは、子どもを産んでほしいとお願いすることではなく、若いカップルが子どもを持ちたいと思えるような環境作りをすることであり、子どもを持ちたいと思っているカップルの希望を叶えることにあります。また、全てのカップルが子どもを持ちたいと考えているわけではないことも十分に理解しておかなければなりません。
 またある議員は、「パパとママ、どっちが好きか」と聞けば、どう考えたって「ママがいい」と答えますと述べています。お母さんたちに負担がいくことを前提とした社会制度で底上げをしていかないと、「男も育児だ」とか言っても、子どもにとって迷惑な話かもしれないとも語っています。さらに、0歳児保育をめぐり、生後34カ月で、赤の他人様に預けられることが本当に幸せなのだろうかと疑問を呈しています。慌てずに0歳から保育園に行かなくても、1歳や2歳から保育園に入れるスキームをつくっていくことが大事なのではないかと訴えています。キャリアを継続させるためには、0歳児保育が必要な女性もいます。0歳児から保育所に預けることが、子どもの成育にとって良くないと考えること自体が時代錯誤です。子育ての多様性に対する理解の欠如です。
 子どもは税金を納めるために生まれてくるのではありません。夫婦も老人ホームに入ることを考えて、子どもを産み育てるわけではありません。そもそもこれら男性議員たちは、子どもをもつことの意味、子育てとは、育児とは何かを理解しているとは思えません。子育てとは、教育の大変さを学ぶ場であり、自己修練の場であるともいえます。子育てを通じて、他人に対して優しくなり、自らの仕事の効率化や人育てのスキルの向上にも役立ちます。すなわち、子育てを教育者として自らを内観する機会として考えるべきです。社会のためになるような子どもを育てることは、仕事をもつこと同様、社会への奉仕です。フロイトは、人生で大切なことはと聞かれ、「愛することと働くこと」と答えています。子育てをすることにより、人生において何が大切かを知ることにもなります。

(吉村 やすのり)

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