画像診断の見落とし

病院の画像診断で、がんの疑いを指摘する報告書を主治医が見落とし、治療が遅れて患者が死亡するミスが相次いで発覚しています。画像全体を診断する放射線科医の指摘が、専門の部位しか診ていない主治医に伝わっていないことによって起こっています。この背景には、医療機器の進歩と病院内の情報共有が十分でないことがあげられます。
最新のコンピューター断層撮影装置(CT)は、広範囲な部位で詳細な断層画像を大量に得られます。放射線科医が画像全体を読影すると、主治医が撮影を目的とした部位以外でがんの疑いを発見することが増えています。想定外の部位でがんが早期に見つかれば、患者のメリットは大きいのですが、主治医が撮影目的の部位の画像しか見ていないケースが増えています。
電子カルテの普及も影響しています。通常、放射線科医は検査翌日以降に画像診断報告書を作成しますが、電子カルテでは検査当日に主治医は画像を見られます。先に自分の専門部位の画像で診断した主治医は、後日追加された報告書を読まないことが多くなっています。また、検査件数が多すぎるため、広い領域の知識を持ち、横断的な視点で画像診断できる放射線診断専門医が読影できていないケースも多くなってしまいます。増加する情報量に放射線診断専門医の増加が追い付いていないことも大きな要因です。

(2018年8月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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