病院の再編について憶う

厚生労働省が、再編統合の議論が必要とみる424の公立・公的病院の名前を公表しました。人口の減少や高齢化といった社会の変化に応じ、病院のベッド数や機能を見直すことは避けられません。勤務医の過重労働が当たり前になっている医療現場の現状を改めるためにも、地域の医療提供体制を再構築する必要があります。各都道府県は、団塊の世代が75歳以上になる2025年を目標に、必要となる病床数を推計して地域医療構想をまとめています。しかし、再編統合などの議論は思うように進んでいません。
このため厚生労働省は、全国の公立病院と日本赤十字社などの公的病院を対象に診療実績を分析しました。がんの手術や救急など高度な医療の診療実績が乏しいか、車で20分以内の近距離に似た機能の病院がある所を、再編統合の議論が必要だとして、病院名を公表しました。診療実績が少ないとされた病院の中には、山間地などで地域の医療を支えている所もあります。見直しには、ベッド数の縮小や、急性期中心の医療から回復期中心への転換なども含まれていますが、一律の名前公表は、対象の病院が全てなくなるような印象を与え、不安と混乱を広げています。
再編統合の必要性について特に議論が必要だと名指しされた公立・公的病院は、民間を含む全病院の5%にあたります。再編統合は病床削減や機能の連携、集約化などを含むと強調していますが、一部では統廃合を強引に進めるものと受け止められています。そもそも全国の病院の約7割は民間病院です。客観的なデータに基づいて開かれた議論をするのであれば、民間病院も含めて検討すべきと思われます。いずれにしても、高齢化や人口減少が進む中、医療体制は見直しを迫られています。

(2019年11月5日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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