白血球の型の多様性

白血病の治療法である骨髄移植への社会の関心が高まってきています。移植する際は白血球の型を合わせる必要がありますが、血液型に比べて多様なため、適合する提供者を探すのは難しくなっています。再生医療に使うiPS細胞の備蓄事業でも、白血球型が重要な意味を持っています。
白血球の型は、HLA(ヒト主要組織適合抗原)と呼ぶたんぱく質の遺伝子で決まっています。遺伝子は主なものだけで、A、B、C、DR、DQ、DPの6つあり、遺伝子解析技術の進歩でさらに増えています。HLAは、両親から1組ずつ受け継いだ2セットの遺伝子でできています。このため、白血球型は親子で違うことが多く、兄弟の間でも4分の1の確率でしか一致しません。骨髄移植では、A、B、DRの2セット、計6種類を一致させる必要があります。確率は数百分の1~数万分の1とされ、多くの患者がドナー探しに苦労します。
白血球型が多様なのは、ウイルスや細菌などの病原体から体を守る免疫に関係しています。HLAの種類が多ければ、排除すべきウイルスや細菌などを味方と見誤る危険が小さくなります。人類が病原体と戦って進化する中で、HLAの種類が増え、白血球型の多様性を得たと考えられています。
白血球型は、iPS細胞を使う再生医療でもカギを握っています。患者の細胞から作ったiPS細胞は、準備期間や費用がかさみます。そのため、再生医療に使うため、あらかじめ他人のiPS細胞を備蓄しておく計画が進んでいます。移植までの期間は1カ月程度に短縮でき、1件あたりの治療コストも10分の1以下にできるとされています。

(2019年3月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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