白血病の免疫療法の改良

 急性リンパ性白血病を治すには、現状では抗がん剤治療や骨髄移植などを行っています。再発する可能性や移植のドナー不足が課題でした。2014年ごろより、患者から取り出した免疫細胞T細胞に人工の遺伝子CARを組み込んで患者の体内に戻す、CART療法が登場しました。免疫細胞でCARが働くと、がん細胞を認識しやすくなって攻撃力が増します。従来は遺伝子を入れるのに特殊なウイルスを使っていました。効率は高いのですが、ウイルスの拡散防止や作業の安全性確保にコストがかさむのが課題でした。現在は免疫細胞の加工に1人あたり約5,000万円かかるとされています。
 信州大学と名古屋大学などのチームは、人工の遺伝子を組み込むことにより、がん細胞を攻撃しやすくした免疫細胞を、白血病患者に投与する新たな治療法を開発しています。新技術では、CARの導入を助ける遺伝子を同時に電気刺激でT細胞に入れています。安全性の高い材料で、遺伝子を高効率で組み込めるようになりました。急性リンパ性白血病の小児患者などを対象に、名古屋大学病院で早ければ今夏にも臨床研究を始める予定です。

(2017年4月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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