禁煙への企業の取り組み

企業が従業員の喫煙を抑える取り組みが加速されています。味の素グループは就業時間に喫煙するのを一切禁じます。社内で認めない例は増えてきていますが、社外での行動まで対象にすることはありませんでした。ファイザー日本法人はたばこを吸う人を採用しないことを決めています。2020年に受動喫煙を防ぐための改正健康増進法が全面施行されるのを背景に禁煙を進めて生産性を上げ、採用でも優位に立つ狙いです。メンタルヘルスや血糖値・血圧などの健康問題とともに、禁煙の取り組みが欠かせません。
米研究機関の調査では、喫煙者は体調への悪影響などから通常通り仕事をこなせなかったり、欠勤したりすることによる生産性損失時間が、年に130時間に達すると試算されています。非喫煙者より52時間長くなっています。喫煙者が病気になれば医療費もかさみ、財源の保険料の企業負担が増えます。社員がたばこを吸うため頻繁に席を外すのも、生産性を低下させることにつながります。世界保健機関(WHO)が2018年に公表した統計では、日本はたばこが主要国より安価なため男性の喫煙率は34%と、先進7カ国ではフランスの36%に次ぐ高水準です。厚生労働省研究班の推計では、たばこが社会に及ぼす損失額は2015年度に1兆8,000億円に達しています。
実効性を高めるためには、たばこをやめられない人への治療も欠かせません。味の素は2018年から禁煙支援プログラムを始めています。医師が指導して、オンライン診療の受診費用も助成します。約2カ月のプログラムで禁煙に成功すれば、自己負担分の半額の5,000円をキャッシュバックします。経営トップが指導力を発揮して禁煙を進めるとともに、社員の喫煙率低下への到達目標を掲げることも大切です。

 

(2019年5月23日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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