第三者を介する生殖医療に関する新しい法律

今国会で、夫婦以外の第三者から精子や卵子の提供を受けて生まれた子どもの親子関係を定めた民法特例法が成立しました。女性が第三者の卵子を使って出産した場合、産んだ女性が母親になります。夫の同意を得て、夫以外の男性の精子を使って出産した場合は、同意した夫が父親になることを規定しています。
明治31年も公布された民法は、現在のような生殖医療の進歩を想定しておらず、第三者の精子や卵子を使って子どもが生まれた場合、誰が親かはっきりせず、子どもが不利益を受ける裁判事例がありました。1998年より旧厚生省、2001年より法務省でも、第三者を介する生殖補助医療に関する親子法についての検討がなされましたが、国会などでの議論は深まらず、ずっと放置されたままでした。この間も、親子関係をめぐる裁判が起き、判決で法律が必要だと指摘されていました。今回の法律制定は実に20年ぶりのことです。
子どもが精子や卵子の提供者を知る出自を知る権利は盛り込まれませんでした。遺伝上の親が分からない辛さを抱え、この権利の必要性を訴えている当事者もいます。精子の売買や、代理出産などのルールづくりにも踏み込んでいません。今回の法律では、今後2年をめどに出自を知る権利については検討されることになっています。第三者がかかわる出産をどこまで認めるかは意見集約が難しく、法律は合意できるところだけを優先させたかたちです。

(2020年12月15日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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