精子提供による人工授精を考える―Ⅱ

近年、出自を知る権利を法的に認めている国が増加している。スウェーデンにおいては、1984年に制定された人工授精法により出自を知る権利を認めている。スウェーデン以外でも、オーストリア、オーストラリア、スイス、ニュージーランド、フィンランド、イギリスなどで子の出自を知る権利を法的に認めるようになってきている。各国ともAIDにおける法的な父子関係は、子とその子を育てている男性(育ての親)との間に成立しており、ドナーとの間にはいかなる法的な親子関係も成立しないことになっている。さらに、子のアイデンティティーの確立のために、ドナーを特定できる情報が提供されることを子どもに保障している。
わが国においても、AIDで生まれた子ども達は、出自を知る権利を法的に認めることを要求している。AIDをはじめとする第三者を介する生殖補助医療にかかわる医療関係者やクライエントが、真実告知を子どもの権利として認識できるようになるにはかなりの時間を要すると思われる。しかしながら、養子縁組においても、里親が子どもにできる限り早期に告知するケースが増加してきている。諸外国と同様、わが国でも精子、卵子、胚の提供で生まれた子どもへの告知のためのガイドブックも作成されており、告知を支援する活動が今後ますます必要になると思われる。

(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。