老化とテロメア

 生物の遺伝情報が収納されている染色体DNAの両端はテロメアと呼ばれ、染色体を保護する役割を担っています。細胞が分裂するたびに、テロメアDNAは少しずつ短くなります。これに伴って細胞分裂の回数が減り、やがて分裂しなくなります。これが細胞の老化です。一方、生物はテロメアを再生する働きも備えています。テロメラーゼという酵素が作用することで、テロメアDNAが作り出され、伸長させることができます。
 がんや動脈硬化、心筋梗塞、認知症といった病気とテロメアの短縮との関係があることが分かってきました。細胞に酸化ストレスや有害物質が作用するとテロメアが短くなり、こうした病気にかかりやすくなります。日光を浴び過ぎたり、たばこを吸い過ぎたりすると、紫外線や有害物質の作用で細胞が傷つきます。細胞は新しくなるため活発に分裂するようになり、これに伴ってテロメアが短くなります。テロメラーゼの働きが追いつかないと、細胞の中では染色体がテロメアを失って不安定になり、がんのリスクが高まります。適度な運動や適切な食生活、良質な睡眠、ストレスをためないことなどにより、テロメアの短縮を予防する効果があるようです。

(2017年6月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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