聴力の衰え

聴力の衰えは50~60代で気づくケースが多いのですが、実は30代から始まっています。耳は、外側の外耳、中耳、内耳に分かれており、耳の老化のほとんどは、内耳で起こります。音は外耳道を通り、鼓膜の振動によって増幅されます。内耳で電気信号に変換されて、脳に伝わります。聞こえが悪くなるのは、内耳にある蝸牛という器官内の音を感じるセンサー、有毛細胞が加齢と共に痛むためです。傷ついた有毛細胞は再生しないため、加齢による難聴は治りません。加齢難聴の場合、まずは周波数の高い音が聞こえにくくなります。高い周波数で構成されるカ行やサ行、タ行の音が聞き分けにくくなります。

聴力の衰えの進行や生活上で不便を感じる度合いには、個人差があります。聞こえに不安があれば、耳鼻科を受診することが大切です。一般の聴力検査に加え、言葉の聞き取り具合を調べる語音明瞭度検査をして診断します。聴力を保つには、音量への配慮も不可欠です。イヤホンを使う時、85~90㏈より小さい音なら耳を傷める心配が少ないと言われています。糖尿病や高血圧、肥満患者は、平均より聴力が悪い傾向にあります。カロリー制限が加齢に伴う難聴の進行スピードを抑えたという動物実験もあります。

 

(2018年9月22日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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