育児休業取得を促すためには

わが国の育児休業制度が法制化されたのは1992年です。働く女性が増え、仕事と育児の両立への配慮が必要になったことが背景です。1歳に達するまでの子どもを養育する雇用者が対象です。当初は、妻が専業主婦だと夫は取得できませんでしたが、今は配偶者の就労形態に関係なく、男女ともに取得できます。
しかし、現在の取得者は圧倒的に女性です。2018年度の育休取得率は、女性は82%を超えているのに対し、男性はわずか6%強です。しかも取得した男性も、その期間は7割以上が2週間未満です。形ばかりというのが実態です。わが国の収入の補償付きで休める期間は世界最長です。しかし、北欧では男性の取得率が約8割、かつて日本並みに低かったドイツも3割を超えています。

政府は、男性の国家公務員について、4月から1カ月以上の取得を原則にすると表明しました。環境整備に向けて管理職向けのガイドブックや仕事の引き継ぎの手引きなども作成しており、民間企業への波及を期待しているようです。また自民党には、民間での取得促進のため、企業が男性社員に取得を促すことを法的に義務付けようという動きもあります。政府・与党が対策を急ぐのは、少子化が依然として深刻なためです。子どもを産み育てやすい環境を整えることが急務となっています。
男性が育休取得のためには、越えなければならないハードルがいくつもあります。しかし、企業にも動きが出てきており、男性社員の育休取得を義務化している企業も出てきています。育休を取得した男性社員は働き方を見直し、生産性が向上したという成果も報告されています。企業にとっては、経営上のメリットもあるようです。人口減少が進む日本で、働き手を確保するには女性の社会進出を促すことが不可欠です。そのためには仕事と家庭の役割分担という意識を根本的に見直す必要があります。残業が当たり前の職場では取得が難しいため、長時間労働の是正も重要です。
大切なことは性別役割分担意識からの脱却です。制度改革ではなく、社会と男性の意識改革です。

(2020年3月30日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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