胎児治療

 お母さんのおなかの中にいる間に赤ちゃんの病気を治療する胎児治療は、国内では2002年に本格的に始まりました。胎児治療は、超音波診断や内視鏡手術など医療技術が進んだことで試みられるようになりました。公的医療保険が適用される治療は2つです。1つは胎児の胸に水がたまる胎児胸水で、胎児の胸に直径1.5㎜の管を入れて、たまった胸水が羊水に流れるようにします。
 もう1つは、双子の胎児に胎盤からの血液の流れが不均等になる双胎間輸血症候群(TTTS)のレーザー治療です。年間約200件と、胎児治療の中で最も多くなっています。従来は血液が多く流れる胎児の羊水を抜く治療が試みられていましたが、この治療で少なくとも1人が生まれる率は60%以下、うち2025%の子は脳性まひなどの後遺症が残りました。レーザーによる胎児治療では、少なくとも1人が生まれる率は90%以上になり、後遺症がある子は約5%に下がりました。
 わが国では、1992年に慶應義塾大学のグループがレーザーによるTTTSの胎児治療の第1例を実施しました。当時は、その有効性や安全性について疑問視する声が大きく、一時的にあまり実施されなくなってしまいました。その後2002年度より本格的に開始されるようになり、医療保険の適用も認められ、現在は多くの周産期医療施設で実施されています。

(2018年1月12日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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