脱細胞化を利用した再生医療

再生医療などによる病気治療に、組織や臓器の骨組みだけを活用する研究開発が進んでいます。再生医療では、幹細胞を目的の細胞に育てて移植する研究が多いのですが、臓器まで作るのは困難です。そのため組織の細胞を薬などで除去する脱細胞化技術を使い、残った骨格を移植することで早期の臨床応用につなげようとしています。京都大学の研究グループは、先天性巨大色素母斑患者の皮膚を再生する臨床研究を実施しています。新手法は、患部を切り取り2,000気圧で10分間処理します。母斑も含め細胞は死にますが、真皮組織の骨格は残ります。これを患部に戻し、患者の培養した表皮を移植します。
脱細胞化技術は、死亡した人から提供された臓器や骨、皮膚などを治療に用いる移植医療が盛んな米国で進んでいます。建物に例えれば、内装などは除去しますが、梁や柱などは残して再利用するイメージです。iPS細胞や免疫研究など日本が強みを持つ分野と組み合わせた研究開発が、競争力につながるものと考えられます。

(2019年9月16日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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