脳梗塞の予防

脳梗塞とは脳の血管に血栓(血液の塊り)が詰まり、血流が途絶えることにより、脳の組織が死んでいく病気です。原因によって3つの型に大別されます。1つ目は、脳の太い血管から枝分かれした細い血管が詰まるラクナ梗塞です。2つ目は、頸動脈や脳の太い血管に血栓ができて詰まるアテローム血栓性脳梗塞です。アテロームとは、血液中のコレステロールなどが血管壁に入り込んでできるドロッとした粥状の塊りのことをいいます。3つ目は、心臓にできた血栓が血流に乗って脳に運ばれ、太い血管を詰まらせる心原性脳塞栓症です。
ラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病による動脈硬化が要因となり、心原性脳塞栓症は心房細動などによって起こります。とりわけ夏に発生しやすいのが、ラクナ梗塞とアテローム血栓性脳梗塞です。夏に脳梗塞が増える大きな原因が脱水です。暑さでたくさん汗をかくと、血液中の水分量が不足し、粘り気のあるドロドロとした状態になって、血栓ができやすくなります。脱水による血圧低下も、脳への血流を滞らせます。
夏の脳梗塞を防ぐには、こまめな水分補給が肝要です。高齢者はのどの渇きを感じにくく、脱水状態に陥りやすいのが特徴です。夜間のトイレを避けようと、水分摂取を控える傾向もあります。夏は日中はもちろん、就寝中にも汗をかくので、寝る前や起床後にも水分を取る習慣をつけることが大切です。水分補給には麦茶や番茶が適しています。
脳梗塞の兆しとしては、FASTで対処します。FASTは顔、腕、言葉、時間を現す英単語のそれぞれの頭文字を取ったものです。顔の片側が下がってゆがむ、片方の腕に力が入らない、言葉のろれつが回らないといった症状が1つでも見られたら、脳梗塞を疑います。脳梗塞は発症から時間が経つほど、半身の麻痺や言語障害などの重篤な後遺症を残しやすく、命を落とすこともあります。4.5時間以内に血栓を溶かす治療や、8時間以内に血栓を機械的に取り除く治療ができれば、症状が改善する可能性が高くなります。

(2018年6月23日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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