脳梗塞の増加

 脳の血管が詰まって血流が滞り、その先の脳組織が死んでしまう脳梗塞は、血管が破れる脳出血、くも膜下出血と合わせて脳卒中と呼ばれます。戦後しばらくは高血圧を背景にした脳出血が多く、1951年の脳失血と脳梗塞の比率は281でした。しかし、この割合は1970年代に逆転し、現在では脳梗塞が脳卒中全体の4分の3を占めています。
 脳梗塞のタイプも、高血圧に長期間さらされて細い動脈が詰まるラクナ梗塞が減少しています。食の欧米化や高齢化の影響で、太い動脈が詰まったり狭くなったりするアテローム性梗塞が増えてきています。また、心房細動などで心臓内にできた血栓が、脳に飛んで動脈を塞ぐ心原性脳梗塞栓症が増えています。
 脳血管が詰まっていれば、血栓を溶かす血栓溶解剤tPAを点滴で投与する治療が有効です。時間が経過してtPAができなかったり、効かなかったりした患者には、血管内治療の血栓回収療法を行います。tPA療法と血栓回収療法は、救命率の改善や重症化防止に大いに貢献しています。

(2017年6月5日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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