臓器移植

 脳死からの臓器提供を認める臓器移植法が施行してから、10月で20年を迎えます。重い心臓病などに苦しむ患者を救う治療として始まりましたが、心臓や肝臓などの提供を待つ患者の期待には十分に応えきれていません。昨年、心臓移植は51件に増えましたが、心臓移植を待つ患者は約600人もいます。これでは、10年間待っても移植を受けられない状況です。特に小児移植は慢性的に不足しており、海外へ渡航して移植を待つ患者も少なくありません。
 国内で脳死を経て亡くなる人は年間約1万人です。全死者数の約1%を占めており、毎日2030人が脳死になるとされます。もし家族に提供の意思があるか確認できたならば、約3割が同意すれば、3,000人が臓器提供できると試算することができます。日本では、脳死判定を受けなければ心臓が止まるまで延命治療が続きます。最近は尊厳死の考えから、積極的な延命治療をしない例も増えています。また、脳死を受け入れなければ、患者や家族にとって利益が多くない治療を続けることになります。わが国においても、終末期医療のあり方を考え直すことにより、脳死移植が発展することが大いに期待されます。

(2017年8月18日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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