若い世代におけるワクチン接種副作用の不安視

感染力の強い変異ウイルスの影響で、これまで重症化リスクが低いとされてきた50代以下の感染者が重症化する例が増えてきています。新規感染者のうち、ワクチン接種が進んだ高齢者の割合は5%を切る一方、20~30代は50%超を占めています。重症化防止が期待できるワクチン接種を世代を問わず進める必要があります。
国際医療福祉大学の和田耕治教授らの調査によれば、ワクチン接種をもう少し様子をみたい、あまり接種したいと思わない、接種したくないとした人の割合が4割を超えています。とくに20~30代の女性では6割弱と、消極的な姿勢が目立っています。ワクチンの効果を認めつつも副作用を不安視する若い人が多いことが明らかになっています。
若い女性に多くみられる新型コロナウイルスワクチンの副作用の不安視には、以前のHPVワクチンの副反応報道が関与していると思われます。新型コロナワクチンの接種を迅速に進めるためには、ワクチンの安全性に関するエビデンスを提示し、接種に理解を深めることが不可欠です。現在のようなHPVワクチン接種の積極的勧奨を再開できない国の方針では、20~30代の女性の消極的な姿勢を変えることはできないと思われます。新型コロナウイルスワクチンを含めたワクチン接種の信頼度を高めるためにも、HPVワクチンの積極的勧奨の再開の宣言が必要です。
新型コロナウイルスワクチンの接種率が5割程度で頭打ちになれば、何度も緊急事態宣言を再発令するような事態になりかねません。そうした事態を防ぐためには、若い人たちを含めたあらゆる世代のワクチン接種率を上げることが大切です。あらゆる診療科の医師がワクチンの有用性や必要性を患者に声かけするなど、総力戦で不安解消に取り組む必要があります。接種を担う自治体や大学は、正確な知識に基づいて接種の判断をしてもらうための教育活動も大切になってきます。

(2021年7月29日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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